はぐれ雲。
「高校生って、やっぱり私たちから見たらオトナよ。逆に、あっちから見たら、中学生なんてまだまだコドモよ。そんなの相手にしてたら、新明くんだって友達に茶化されるだろうし。それに好きな人が高校でできても、私を気にして、そっちにいけないんじゃないかなって」

「それでいいじゃん、悩むことないでしょ。もし、もしもの話だからね。
先輩があっちで好きな人ができたとする。でも、あんたを気にして先にすすめないのは、やっぱりあんたに未練があるからよ。忘れられないからよ。それだけ、あんたの存在は大きいってこと」

「……」

「新明先輩が卒業してから、博子なんか変。恋ってもっと楽しい顔してなきゃ、好きな人に対しても失礼じゃない?不安な気持ちもわかるけどさ、でも実際、先輩はあんたを待ってくれてるじゃん」

<真梨子にはわかってもらえないよね…。同じクラスの男の子と恋をしてるんだから。
授業中でも休み時間でも、会いたくなったら彼のいる方向に目をやればいいんだもん。
それができないって、まだ私たちの年じゃ致命的なんじゃないかな。
特に私と新明くんは、電話で話すわけでもない。休みの日に、ふたりでどこかへ出かけるわけでもない。
ただ、週に何回か放課後一緒に帰る、そのたった30分が、全てなの。

高校はどう?なんて聞けない。
女の子の話が出てきたら、絶対に嫉妬してしまうから。
付き合ってるわけでもないのに、妬いてしまうから>

「もし好きな人ができたら、遠慮せずにその人のところへ行ってね。新明くん、義理固いんだから、無理して私につきあわなくてもいいよ」

彼にそう言おうとまで、博子は本気で思っていた。
鏡の前で、できるだけ明るく言う練習までしたくらいだ。

辛くて辛くて仕方なかったが、このまま中途半端な関係が続くのは、もっと辛かった。

亮二を束縛しているのではないのか。

仕方なく校門で待っていてくれるのでは、そう思えてならなかった。

『今からマックに行くんだけど、一緒にどう?』

それを断らせてるのは、ほかならぬ自分なのではないか…

次に会うのが、なんだか怖かった。

果たして自分は、この言葉を言えるのだろうか。


<でもやっぱり私…>


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