はぐれ雲。

おばさんはキャベツの上にもやしと天かす、豚肉を順にのせながら亮二に言った。

「もう、準備できたの?大変だね」

博子は何のことかわからず、隣を見た。

「つまんねぇこと言ってないで、早くひっくり返せよ」

そう言って彼は鉄板を指差す。

「はいはい」

おばさんは、山盛りのキャベツが乗った生地を上手にヘラでひっくり返した。


「はい!どうぞ」

焦げたソースの匂いが食欲をそそる。

こんもりとのせられた鰹節も奇妙なほどに踊っている。


「ん!おいしい!」

博子は一口食べてそう言った。

「ね!初めて食べたけど、おいしいね!」

亮二はマンガを見ながら黙々と食べている。

「ここ、よく来るの?」

「ああ」

「キムチソースとかあるんだって!かけてみる?」

「…ああ」

適当に返事をしているのがまるわかりだった。


「ね、おそばも食べてみたいの。ちょっとちょうだい」

博子はそう言って亮二のお好み焼きに手を伸ばした。

「おまえ、いやしいんだよ」

マンガを読んでいたくせに、亮二が文句を言った。

「いいじゃない、けち」

「ったく、ほら」

そう言って、彼は小さなヘラでお好み焼きをピザのように三角形に切ると上手に博子の皿に乗せた。

そしてまたマンガに目を落とす。

「ありがとう」

ヘラをうまく使いこなせない博子は箸でそれを口に運んだ。

「ん!おそばもおいしい!」

博子の言葉に対してか、マンガが面白かったのか、亮二が鼻で「ふん」と笑った。

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