はぐれ雲。
待ちに待った高校の入学式。

満開の桜が、きっと楽しいであろう高校生活を祝福してくれているようだった。

真梨子も一緒、どこまでも腐れ縁。

「こうなったら、とことんあんたと一緒にいるよ」

そう言って、彼女は抱きついてきた。

<やっと新明くんに追いついた>

博子の胸は希望に満ち溢れて、ピンク色の花びらで覆われた空を仰いだ。

ホームルームが終わったら部活見学で剣道部に顔を出そう、と真梨子が誘ってくれた。

「うん、そうしよ」

亮二に会うのは、あの卒業式の後の『デート』以来だ。

真梨子とはクラスが違っていたので、剣道部の見学は待ち合わせをして行くことにした。

担任の先生は自己紹介から始まって、高校生の心構えなど、とにかく話が長い。

他のクラスはもう終わったのだろう、廊下が賑やかだ。

博子は、珍しくイライラした。


「ごめん、待った?先生、話長くて」

博子は息をきらして、待ち合わせ場所に来た。

「もう、博子ってば、焦っちゃって」

「ちっ違うわよ。変なこと言わないでよ」

「じゃあ、行こっか。新明先輩、待ってるわよぉ」

真梨子が意地悪そうな顔で博子を見た。

「ちょっと待って!おトイレに…」

親友は呆れたように言って、両手をヒラヒラさせた。

「はいはい、行ってらっしゃい。気の済むまで鏡見て、きれいにしてらっしゃい」

その言葉に耳が熱くなるのがわかった。


<やだ、緊張する>

洗面台の前の鏡を見て、手で髪を整える。

「よしっ」

博子は気合を入れた。





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