はぐれ雲。
道場の前には、胴着を来た先輩たちが勧誘に出てきていた。
抑えようとしても抑えきれないくらい、胸が高鳴る。
<新明くん…>
博子は辺りをキョロキョロ見回した。
だが亮二の姿が見えない。
<こういうの嫌いだから、きっと道場の中かな>
そう思った。
「剣道部に興味ある?」
白い胴着を来た女の先輩が声をかけてきた。
「あ、はい。入部したいと思ってるんですが、一応どんな感じか見ておこうと思って」
真梨子がお得意の人懐っこい笑顔で答える。
先輩は「あなたも?」という表情で博子を見るので、コクリと頷いた。
「どうぞ、どうぞ。見学していって」
「失礼します」
そう言って道場に入ると、数人が素振りをしたり、柔軟体操をしていた。
「新明先輩、まだみたいね」
真梨子が耳打ちする。
「うん…」
博子は少し不安になった。
練習時間に遅れることを嫌う亮二が、まだ来ていないなんて。
時計の針がどんどん進んでいく。
準備運動から、とうとう面を付けての練習へと入っていった。
「あのぅ…」
いてもたってもいられず、表にいた白い胴着の先輩に尋ねた。