チャリパイ8~恋のエンゼルパイ~

いつものように隅の席で推理小説を読んでいた詩織が、パタンと本を閉じ立ち上がった。


華奢そうなその手首をくるりと回すと、センスの良い小さな腕時計の時刻を確認する。


そして、小説が並べてあった本棚の方へと歩いて行くと、持っていた小説を戻しその隣の本へと指をスライドさせた。


「無いわ……」


詩織が次に読もうとしていた、先程の推理小説の『下巻』が無かった……


その本がある筈の場所には、貸出中を知らせる数字の書いてある木の板が挟まれていた。


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