チャリパイ8~恋のエンゼルパイ~

心配そうに耕太を見つめる詩織の顔を、耕太はまともに見る事が出来なかった。


「ちょっとお待ち下さい……」


耕太は俯いたままそう答えると、後ろで古書の整理をしている上司にこの事を相談した。


「来週位と言っておけばいいだろ。」


「でも、もう3日も遅れているんですよ!」


「ウチは金貸しじゃ無いんだから…おおっぴらに延滞者に催促する訳にもいかんのよ。」


上司はさほど気にする訳でも無く、中断していた古書の整理を再開してしまった。



さっきよりも湿り気を増した掌をズボンの横で拭いながら、耕太は申し訳無さそうに再び詩織と対面した。


「あのですね……」


その耕太の言葉に割り込む様に、後ろから思わぬ台詞が飛び出した!



「その小説、今夜お宅にお届けしましょう!」


その声の主はシチローだった。


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