チャリパイ8~恋のエンゼルパイ~

シチローは、この些細な出来事を見逃さなかった。


この小説を現在の延滞者から取り戻し、それを耕太に届けさせれば、詩織はきっと耕太に感謝の気持ちを抱くに違いない。



感謝からはじまる“愛”もあるはずさ!



シチローは、詩織に住所と電話番号を聞くと管理ノートにサラサラと書き込む真似事をした。(本当は既に調査済みだ)


…と、突然詩織が不思議そうな顔をしてシチローに問いかけてきた。


「あの…どこかでお会いになりましたっけ?」


「えっ?……さ、さぁ…他人の空似じゃないですかね……」


まさか、あの時の『変質者』だったとは詩織も想像がつかなかったろう……


そうして話がまとまると、詩織は深々とお辞儀をしてから腕時計でバスの時間を確認しながら図書館を出て行った。


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