チャリパイ8~恋のエンゼルパイ~
夜の公園のベンチには、月あかりに照らされた二人の姿があった。
「あの…確か、山口さん……」
「耕太です!山口耕太。」
ぎこちないお互いの自己紹介が済んだあと、二人は小説の話でしばし盛り上がった。
読んだ事のある推理小説の話……
好きな作家の話……
目の前の詩織と共通の話題が持てる事…好きな物が一緒な事。
寒い冬の夜であったが、たった120円のカフェオレであったが…今のこの時の耕太の心は最高に幸せで最高に暖かかった。
「あ…今日は満月だったんだね。」
ふと、空を見上げた耕太が今更ながらに呟いた。
「そうですよ、今気が付いたんですか?」
詩織が笑って答えた。
「そうか…じゃあ僕は今日一日、下ばかり向いていたんだな……」
感慨深そうに目を細めて、耕太は少しの間まんまるな月を眺めていた。
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