白亜の記憶
会場がザワついていた。

彼女が現われてから、何秒くらいたってるんだろう?

観客も、何かあったと気付くくらいの時間があったのだろうか。

白亜は、ずるっと崩れ落ちた。

肩から、血が流れ出ている。

誰か、あたしをここからそっと連れ出して。

今なら、歌会を途切れさせなくてすむ。

そばにいる護衛を、力を込めて見つめる。

けれど、彼は、頭が働かないようだ。

早くっ。

白亜は目を閉じた。

頭がぐらぐらして、開けていられないのだ。

二ナの声が途切れる。

バカ。

歌い続けなきゃ。
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