永遠の華〜last eternal〜
「……ふん」
先ほどのことを思い出し、俺はタバコに火をつけた。
「まだイラついてんの、香?」
カウンターに座り酒を飲んでいた悟が、
俺の顔を見るなり、呆れた表情をしていた。
「ちげぇよ」
「素直じゃないなー。そんなんだから、ゆかりに怖がられるんだよ?」
「……うるせぇ」
悟の言葉に、俺は少し苛立ちを覚える。
「でも、いまさら英二が出てくるなんて意外だな……」
指でカラン、とグラスの中の氷をつつきながら悟が呟いた。
月城は、未だにゆかりが好きなんだろう。
一方的に別れを告げたのは、紛れもなくゆかりだった。
ゆかりは……他人に思われる事も、思う事も知らなかった。
いつからだろうか。
あいつがあんな風になったのは。
―――昔からかもしれない。
両親は忙しい人で、全く家に寄りつかなかった。
小さなゆかりを見ていたのは、兄の響也。
しかし響也も高校を卒業とともに、
複数経営する両親の会社の一つを任され、忙しい身になってしまった。
そのせいか、ゆかりは一人で過ごす日がほとんどで。
あいつは他人から与えられる愛情というものを知らずに育った。