NAIL
「中島美知子さま、二十八歳、OLですか。いや、もっとお若いかと思ってました」

 またもや青年はにっこりと微笑みを投げて寄越す。

 その笑みに、美知子は思わず顔が火照るのを感じた。赤くはなっていないだろうかと慌てて頬に手をやる。少し熱くなっていた。

「さて」

 青年は今度は真面目な顔を投げて寄越した。

「綺麗になりたいのでしたよね。貴女の望みは。夢にも願望の欄にも書かれてらっしゃる。具体的にはどのように?」

「ネイルだけなんです」

 彼女は言った。胸がぎゅっと切なくなる。

「綺麗にネイルを着飾って、そうしたら、私は一時的にでも綺麗になれるの。見た人達の視線は勿論この指先に注がれているのだけれど、でも、それでも私は……」

 綺麗だと言われたい。

「畏まりました」

 青年は静かに頷いた。
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