それでも君が。
「ちょっ……藤堂く」
「つーかさぁ。王子様はもっと王子様らしくしたら? こんな時、もっと早く出てきてやれよな。こいつこんなんなって、可哀想によ」
藤堂君の声が少し低くなり、固くなったのが分かる。
私が可哀想だと本気で思ってるのかどうかは分からないけど……
庇ってくれたのには間違いないみたいだ。
「違うの蒼汰君!」
少女Aが、今までより声を高くしてそう言いながら、駆け足で蒼君に近づいていく。
この状況がすごい勢いで私の脳内を掻き回していて、上手く蒼君を直視できない。
蒼君……今、どんな顔してる?
何を思ってる?
地面を見つめていると、また少女Aの声。
「蒼君っ……あのね、これは……あの子があまりに生意気だから、注意してただけでっ……! 別にあたし達……」
──注意か……。
何とでも言えるなぁと、変に納得する。
子供への過度の暴力を、これは虐待じゃない、しつけだ、と言う親と同じだ。