それでも君が。
尚も何か弁解をしている先輩達の声を聞いていると、
──バンッ!
という何とも大きな音が響いた。
弾かれたように顔を上げ、私は目を見開いた。
蒼君が、あの優しくて穏やかで温厚な蒼君が──
渡り廊下と昇降口を仕切るドアを、拳で叩いていた。
一瞬、シンと静まり返ったその場。
「……誰?」
蒼君のそんな冷静な声と、いつもと何ら変わらない表情が、この張り詰めた空気の中、余計に背筋を凍らせる。
「誰が、羽月をあんな風にしたの?」
その問いに、もちろん先輩達はすぐには答えない。
「そ、蒼汰く」
「誰がやったのかって聞いてんの」
少女Aの呼びかけもサラリと無視する蒼君に、さすがの先輩達も戸惑いを隠せずにいる。
──やめてって。
私なんかどうなってもいい。
だから、やめてって。
そう言いたいのに、声にならない。
このキンキンした空気が、私の言葉を飲み込んでいく。
喉が、焼け付くように熱い。