それでも君が。




「そ、蒼君、お願いっ……私、大丈夫だから……! ……そ、そんな、そんな顔しちゃ嫌だよぉ……」





“そんな顔”と言われる程の表情をしていた自覚がないのか……



蒼君は、眉を寄せて私を見てくる。





「あの、……あの、何ともないから……だからっ……」





何の力もない言葉のようにも思えた。



でも、とにかく、こんな蒼君は見ていたくなかった。



私のために怒ってくれてるって、分かってる。



でも、だからこそ、私のためにこんな……



蒼君の中の優しさを潰してほしくない……!



しばらく私をジッと見つめていた彼は、何かを諦めたようにハッと柔らかく息を吐いた。



そして、少女Aの背中がついている靴箱の側面に、その拳を叩きつけた。



ガコンッ!



という音が響く。



そして





「二度はない」





という、蒼君の声も……。



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