それでも君が。
先輩達が気まずそうにその場を去った後、蒼君が私の所にゆっくりと近付いてくる。
私は藤堂君の身体から離れ、またお礼を言った。
「ありがとう、藤堂君」
「……いや」
静かにそう返した藤堂君は、そこに立つ蒼君に向かって言った。
「王子様には余計なお世話だったかもしれないけどなぁ」
「ちょ、藤堂く」
「でも、王子様があんな風に怒るなんて思わなかったな。いいとこ持ってかれたって感じ」
そして、蒼君の肩に、拳を軽く叩きつける。
蒼君は叩かれた肩にチラリと目をやり、でもまた藤堂君に目をやった。
「ありがとな。助かった」
そして、そんなことを言ったのだ。
私はもちろん、藤堂君も目を丸くした。
「……別に、あんたを助けた訳じゃねぇし。……つかさ、なに、あんたツンデレ系な訳? 冷たいと思えば、やけに過保護だったり……何なんだよ」
蒼君をマジマジと見ながら、藤堂君は探るようにそう口にした。
でも、無表情な蒼君はその問いには何も答えない。
シンとした空気が私達の間に流れた瞬間、藤堂君がハッとしたように口を開けた。