それでも君が。
「あ、忘れてた」
そう言って、自分のカバンの中を探り出す。
──何ていうか……
マイペースな人だな……。
そう思っていると、藤堂君は私の前に、赤いチェック柄の巾着袋を差し出した。
咄嗟に受け取る。
私のお弁当箱だ。
「美味かった。ごちそうさん」
と、藤堂君。
「え……? う、美味かったって……」
「昼間、お前が俺に投げつけたんだろうが。中身がまだ入ってたからさ。食わせてもらった」
あっけらかんと言う藤堂君は、ニッといたずらっ子みたいに笑った。