それでも君が。




「あ、忘れてた」





そう言って、自分のカバンの中を探り出す。



──何ていうか……



マイペースな人だな……。



そう思っていると、藤堂君は私の前に、赤いチェック柄の巾着袋を差し出した。



咄嗟に受け取る。



私のお弁当箱だ。





「美味かった。ごちそうさん」





と、藤堂君。





「え……? う、美味かったって……」


「昼間、お前が俺に投げつけたんだろうが。中身がまだ入ってたからさ。食わせてもらった」





あっけらかんと言う藤堂君は、ニッといたずらっ子みたいに笑った。




< 139 / 292 >

この作品をシェア

pagetop