それでも君が。
「……蒼君? どこ行くの?」
「保健室に決まってるだろ。手当て」
「だ、大丈夫だよ、帰ってから自分でっ……」
「足引きずってる」
「………」
それ以上は何も言えず、ただ蒼君の歩幅に合わせて歩いた。
校内は静かなもので、2人の足音だけが響く。
まるで、この世に2人しかいないかのような気さえする程、静か。
握られている手首を見つめた。
蒼君の、大きな手。
温かくて、力強くて、安心する手……。
──触るなって言うくせに……
あなたからは、触ってくれるんだね。
切なさで、胸が軋むよ。
──冷たいと思えば、妙に過保護だったり……か。
藤堂君が口にした言葉が、やけに頭の中をグルグルと回っていた。