それでも君が。
「……他に痛いとこは?」
蒼君がそう言うから、私は首を横に振った。
その私のアクションにホッと息をついたようにした蒼君は、けれども次の瞬間に、私の顔を見て眉を潜めた。
そして、私にグッと顔を近づけてくる。
フワリと香る香水は、やっぱりいつもの蒼君のものと変わらない。
「……蒼君……?」
「腫れてる」
私の口元を見ながら呟く。
は、腫れてる……?
深く考える間もなく、思い当たった。
どっちだろう。
頬を叩かれた時のものか。
はたまた、顎を掴まれた時のものか……。
「平気だよ、こんなの」
「痛いだろ……」
「平気だって! そんな顔しないでよ……全然痛くなんかっ……」
言い終わらない内に、視界で蒼君の顔がアップになる。
一瞬だった気もするし
スローモーションみたいでもあった。
蒼君は、膝や肘だけでなく、頬にまで口付けてきた。