それでも君が。
フワリとした唇の感触。
首に、蒼君の手が滑るように回される。
喉から先に、空気が入っていかないような気がした。
苦しくて、でも嬉しくて。
目を閉じた。
放課後の誰もいない保健室。
微かな風のせいでパタパタと音を立てる真っ白なカーテン。
目の前にいる、大好きな人。
暴れる、心臓。
どれもこれもが、夢の中のものみたい。
やがてゆっくり離れた蒼君の唇。
咄嗟に、彼の顔を手で挟んだ。
まるで、離れちゃ嫌だという赤ちゃんみたいだ。
蒼君は、少し開いた目で間近で私を見つめてくる。
「そ、君……好き……大好き……だよ」
小さな声だったけれど、目の前の人に届けばいいんだ。
私は、彼が私にそうしたように、頬に口付けた。