それでも君が。




家に帰り着くと、蒼君はこう言った。





「一回家に帰ってからまた来る。その間に、着替えとけ」





「どうして? 蒼君勉強があるでしょ」と言うと、彼は私に鞄を渡しながら言ったのだ。





「看病する人いないとダメだろ。お前の部屋で勉強するから」





──蒼君。



やっぱり、大好きだよ。



隠そうとしても、隠せるものじゃないよ。



あなたのその優しさは……。



玄関の扉を開け、ゆっくり靴を脱いで部屋に上がる頃には、何だかすっかり具合が良くない気がしていた。



リビングに入ってフゥ……とため息をつき、鍵をテーブルに置く。



熱を計ろうかと、体温計が入ってる棚に手を伸ばした時だった。




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