それでも君が。
──ピンポーン……。
……蒼君なら、勝手に上がってくるよね。
親がいない時のお客さんには、対応に困ってしまうというのが正直なところだ。
かと言って、出ない訳にはいかない。
私は少し足早に玄関に向かった。
そして、そこに常備してある外用スリッパを履き、扉を開ける。
扉の先に姿を現した人を見て、息を飲んだ。
そこには、スーツ姿の男の人が2人、立っていたのだ。
2人とも、どう見ても若いとは言えず、30代後半に見える。
セールス……?
だとしたらまずい、と思って焦ったけど、何故だか男の人達も、気まずいとでも言いたげに眉を寄せている。
すると、2人が1秒程顔を見合わせた後、1人の男の人がいきなり頭を下げた。
「こんにちは。えー……と、お母さんはいらっしゃいますか」
「え……母は……いません。この時間は、買い物だと思いますけど」
「あ……そうか……そうですか。………え、と、キミは、娘さんかな?」
「……はい」
「岩越……羽月さんで間違いないかな」
「………」
何で、名前を知ってるんだろう……。