それでも君が。




──ピンポーン……。



……蒼君なら、勝手に上がってくるよね。



親がいない時のお客さんには、対応に困ってしまうというのが正直なところだ。


かと言って、出ない訳にはいかない。


私は少し足早に玄関に向かった。


そして、そこに常備してある外用スリッパを履き、扉を開ける。



扉の先に姿を現した人を見て、息を飲んだ。



そこには、スーツ姿の男の人が2人、立っていたのだ。


2人とも、どう見ても若いとは言えず、30代後半に見える。


セールス……?


だとしたらまずい、と思って焦ったけど、何故だか男の人達も、気まずいとでも言いたげに眉を寄せている。


すると、2人が1秒程顔を見合わせた後、1人の男の人がいきなり頭を下げた。



「こんにちは。えー……と、お母さんはいらっしゃいますか」


「え……母は……いません。この時間は、買い物だと思いますけど」


「あ……そうか……そうですか。………え、と、キミは、娘さんかな?」


「……はい」


「岩越……羽月さんで間違いないかな」


「………」





何で、名前を知ってるんだろう……。




< 153 / 292 >

この作品をシェア

pagetop