それでも君が。
知らず知らず、相当怪しんだ顔をしてしまっていたのか、頭を下げた男の人は、慌てた様子でスーツの内ポケットに手を入れた。
「怪しいものじゃないです。これ」
そう言って目の前に広げられたそれを見て、つい「あ」と声を出してしまった。
そこには、その男の人の写真が張ってあった。
ドラマとかでよく見る。
“警察手帳”だ。
てことは……刑事さん…?
お巡りさんっていう感じのカッコもしていないし……。
「あの…何か…ご用が?」
相手が刑事だと分かって、逆に少しだけ芽生えた恐怖心。
探るように聞くと、2人はまた気まずそうに顔を見合わせた。
そして、手帳を見せてくれた方の刑事さんは、またそれを内ポケットに仕舞いながら、話し出す。
「あー、最近、変わったことはないですか? 軽い見回りです」
「…見回り、ですか」
「何もなければ、それでいいんです」
「…特には、何も」
私にしたら、刑事さんが訪ねてきたことが“何かあった”ことに入るのだけど……。
私の答えを聞いた刑事さんは、いかにも愛想笑いという感じに唇の端を上げた。