それでも君が。
澪ちゃんは朝日を反射させる真っ黒な髪の毛をフワリと揺らし、頭を横にして、私を上目遣いで見てくる。
まるで、「いい?」と聞いているかのように。
私は唇の端を持ち上げ、大きく頷いた。
「良かったぁ。じゃ、行こ」
「あ、待って澪ちゃん、蒼君が……」
「あ、蒼先輩なら、今日から朝練出るって言ってたよ」
「え?」
「あ……は、晴斗先輩が言ってたよ」
「そっ、か……」
私に何も言わずに、急に……?
また真っ暗な穴に入ろうとしていた私の意識を呼び戻すかのように、澪ちゃんが私の腕に腕を絡めてきた。
半袖から伸びる彼女の腕は、細くて白い。
「行こ? 羽月」
「……うん!」
澪ちゃんの笑顔が、今は何よりの安定剤な気がした。