それでも君が。
「……澪ちゃん」
「なぁにー?」
歩きながら、新しく出来た美容室に目をやっていた澪ちゃんは、私に目を向けた。
いつも大きな目を、更に大きくして。
私はその目を見ながら、言った。
「昨日は、ありがとね」
「………」
「澪ちゃんが、友達で良かった」
「……や、ちょ、照れるじゃん!」
バシバシと私の腕を叩くその力は結構なものだったけど、私は続けた。
「本当にそう思ってるんだよ。澪ちゃんが、私の気持ちを否定する人だったら……私、きっと今頃、……」
「………」
──蒼君に別れを告げていたかもしれない。
その言葉を飲み込んだ私を見て、澪ちゃんはまたニコリと笑った。
そして、
「その代わり、私が恋で泣いた時には、肩貸してよね。本当は胸貸してほしいとこだけど、そこは蒼先輩に怒られそうだしぃ」
と声を張った。
私は、声を出して笑った。
そう言えば、澪ちゃんの恋の話、あまり聞かない。
いつもは晴君晴君って、言ってるけど……
どうなんだろう。