それでも君が。




──その日、学校に着いた時間が早かったから、朝練を見に行ってみたんだ。



そこには、汗だくで練習する後輩達に、フォームなどの指導をしている蒼君がいた。



久々に、彼がバスケットボールを持っているのを見た。



やっぱり、カッコいいんだ。



そんな彼を見ている女子が、体育館の入り口に数名いるのを目にした。



もちろん、皆が蒼君目当てという訳ではないんだろうけれど。



その女子達がいる入り口とは別の、横にある入り口から見ていた私は、蒼君と目が合った。



彼は、フォームを教えていた後輩に何か言って、私の所に走ってきた。



いつもなら、そこで笑って……



「おはよ。見にきてくれたの」



って、言ってたの。



人間の記憶って、残酷だね。



そんな記憶があるから、彼がその時に発した言葉を、より残酷にしたんだ。




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