それでも君が。
体育祭が始まる。
学年対抗だ。
小学や中学の時は、蒼君と同じ団になれたこともあったのに。
「体育祭の実行委員を決めるぞ」
担任の男の先生は、教卓に置いたプリントを見下ろしながら、鉛筆の尖ってない方で、耳の裏をかきながら言った。
今年45歳だそうだけど、皺が多いせいか、50代に見える。
「はーい。俺、やってもいいぜ」
そう言って手を上げた人を見て、きっと教室中の皆がギョッとした。
藤堂君だ。
彼は、だるそうに座って、片手をズボンのポケットに突っ込んだまま、あと一方の手を上げている。
「藤堂……お前……出来るのか」
「ひでぇなセンセー。差別」
「いや。区別だ」
「……あんまフォローになってねぇよそれ」
藤堂君が唇の端を嫌そうに持ち上げながらそう言うと、教室中がドッと沸いた。
「お前がやると言うなら任せる。頼んだぞ」
「あーい」
「よし。じゃあ女子は……」
「あ、センセー、推薦」
「何だ藤堂、今日はやけに絡むな」
「絡むとか言うなよ。アイツ」