それでも君が。
「……蒼君……」
そこには、ドアのくぼみに手を掛けた蒼君と、ノートみたいなものを抱える秋山先輩が立っていた。
蒼君は、角から姿を現したばかりの私と藤堂君をジッと見ている。
きっと、会話の内容までは聞かれてないと思うけど、楽しそうな雰囲気は伝わってしまっただろう。
「……ずいぶん、楽しそうね」
猫みたいな目で私を捕らえ、冷たく言い放った秋山先輩。
心臓が冷えて、そこから全身が冷え切っていくような感覚に襲われる。
責められるようなことはしていないはずなのに、何故か責められているように感じた。
蒼君の顔が、また見れない。
「入りましょ、蒼汰」
そこにいる4人が黙ったのは1秒だったか、10秒だったか。
秋山先輩が、蒼君の背中にその手を当てた。