それでも君が。




彼女に促されるままに教室に入っていこうとする蒼君の背中に、投げるように言葉をかけた。





「蒼君!」





彼はピタリと動きを止め、顔だけを私に向けた。





「あ、あの、……部活は……? 何で、ここに……」


「実行委員長になったから」


「……え」


「だから。私と蒼汰が、実行委員会の委員長と副委員長なのよ」





蒼君の簡潔な言葉に補足するように、秋山先輩が、ため息混じりにそう言った。



その隣にいる蒼君は、ただまっすぐに私を見ている。


その目から何かを感じ取れないものかと見つめ返すけど……



蒼君は、目を閉じるついでという感じで、私からその目を逸らした。



そして、秋山先輩と一緒に教室に入っていく。



ピシャッと閉められたドアを見つめた。




< 196 / 292 >

この作品をシェア

pagetop