それでも君が。
──これが、今の私と蒼君の距離かな。
なんて、変なことを思った。
「……大丈夫かよ」
よほどボーっとしてしまっていたのか、隣に立つ藤堂君が、腰を屈めて私の顔を覗き込む。
私は彼を見上げ、唇の両端を上げて見せた。
藤堂君は鼻で息をついて、私の頭にポンと手を置き、言った。
「色々大変だな」
そう言って、先に歩いていき、さっき蒼君達が入ったドアとは違う方のドアを開けた。
「岩越。早くしろ」
……私が入りやすい空気にしてくれた。
ていうか……私の名前覚えてくれてるんだなぁと、変に感動した。
私は足を踏み出し、彼が開けてくれたドアから教室へと入った。
中にはもう数名の委員がいて、教壇の上には、蒼君と秋山先輩がいた。
これから委員会がある度に、この光景を見なきゃいけないんだと思うと、ちょっとだけ、気が重くなった。