それでも君が。
委員会議の間、秋山先輩は何度となく私に視線を送っては、蒼君の身体に触れた。
今にも、触らないでと叫んでしまいそうだった。
「帰らねぇの?」
藤堂君の声で、ハッとした。
周りの皆は、もう椅子から立ち上がり、それぞれに話をしながら、教室から出て行こうとしている。
「ごめん、帰る」
「ボケッとしてんのは顔だけにしろ」
「あのね、あなたね、」
「羽月」
私が藤堂君に文句を言おうとするのを遮るかのような、背後からの蒼君の声。
急いで振り向く。
「蒼君! お疲れ様!」
「うん。お前も。昇降口で待ってろ。すぐ行く」
「分かった」
蒼君は無表情のまま、藤堂君に視線を移した。
2人は数秒そのまま視線を通わせていたけど、先にそれを外したのは蒼君だった。
「また後で」
私にそう言って、先に教室から出て行った。
気付けば、周りにはもう人がいない。
一気に力が抜け、鼻から長めに息を吐いた。