それでも君が。
そして、私の顔と同じ低さにまで自分の顔を持ってくる。
ど、アップ。
「な、なに!?」
「……いや。元気か?」
「……元気……だけど」
「ふぅん。あっそ」
「……早くどけてよ、手……」
「はいはい」
クスクスと笑い、藤堂君は手をどけた。
手首に香水をつけているのか、フワリと香った。
咄嗟に振り返る。
だけど、彼はもう既に自分の席に向かって歩いていて、周りの男子達から
「重役出勤だなぁ藤堂」
とか何とか言ってからかわれている。
周りの男子より大人びて見えるのは、何でだろう……。
廊下に出て扉を閉め、ため息をつきながら足を踏み出す。
──どのみち、私には関係ないか。
数学準備室の扉をノックすると、中から「はい」と聞こえた。
私は「失礼します」と言って、扉を開ける。
すると、コピー機の前で作業をしてる人がいて。
後ろ姿だったけど、私はすぐにその人が分かった。