それでも君が。




蒸し暑い昇降口に、フワリと風が舞い込む。



少し、切ない気持ちになって。



少し、爽やかな気持ちになる。



澪ちゃんを……



晴君のことを好きだと言う澪ちゃんを……。



とても、可愛いと思った。



綺麗なその想いを目の当たりにして、目が覚めた想いだった。



誰かを想う気持ちって、こんなに綺麗なんだって。



感動さえした。



忘れてた気がする。



誰かを想うってことは、弱さを増長させるかもしれない。



でもそれ以上に、強くなれる。



優しくなれる。



温かい気持ちになれる。



そんな簡単なこと、忘れてたよ。



藤堂君の優しさに救われた。



晴君の温かさに、支えられた。



でもやっぱり、私が愛しく思えるのは、蒼君だけ。




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