それでも君が。
「羽月」
背後から聞こえたその声に反応するのは、きっと私の耳じゃなくて、心。
心が反応するの。
振り向くと、蒼君が立っていた。
「蒼君!」
「待たせてごめん」
私が首を横に振ると、蒼君は目を細めた。
何かを懐かしむように……。
「蒼君?」
「いや。行こう」
「……うん」
私達は昇降口を出て、歩き出した。
ふと空を見上げると、ねずみ色の雲が覆っていた。
今にも雨が降り出しそうだ。
「雨降りそう」
私がポツリと言うと、蒼君も「そうだな」と相槌を打つ。
前まではそんなに嫌いじゃなかった雨。
最近は、何だかあまり好きじゃない。
知らない内に、何だか胸がザワザワしてるから……。