それでも君が。
蒼君は私に目を向けて、眉を少し下げ、口元を緩めた。
ほんの少しだったけど、優しくて、切なくなる笑み……。
胸が、キュンとなって。
思わず、彼の腕に自分の腕を絡めてしまっていた。
ぎゅーっと力を入れる。
ふと見上げると、蒼君は何故か少し驚いたような表情を浮かべていて……
それを打ち消すかのように、笑顔を出した。
「大好きだよ! 蒼君!」
久しぶりに、直接伝えた気がする。
こんな素敵な言葉を。
最近、口にしてなかった。
腕を絡めたまま、また前を向く。
蒼君は何も返事をしなかったけど、私に触られても、“触るな”と言わない。
それだけで、本当に嬉しかった。
「……羽月」
「え?」
顔を上げると、蒼君はやっぱり前だけを向いていた。
「なに?」と言うと、数秒黙った後、彼はこう言った。
「月末の休み、出かけよう」
「え?」
「何か用事ある?」
「えっ! ううん!」
「……じゃあ。また連絡する」
「うん!」
嬉しい……!
嬉しくて嬉しくて
飛び上がってしまいそう。