それでも君が。
優し過ぎです。
沼の中を泳いでいるような、そんな心地悪さの中、目が覚めた。
初めに目についたのは白い天井、その次にお母さんの顔。
眉を下げ、私の手をギュッと握ってくる。
「羽月……? 分かる? ここ、病院よ」
「……おか……さん……」
お母さんは、ホッとしたように柔らかい息を吐き、私の手を持ち上げ、自分の額に当てた。
「先生に見て頂いた限り、どこにも異常はないそうよ。ただ、混乱して、精神的に良くないだろうから、安静にしてなさいって。今、先生呼んでくるわね」
そう言って、お母さんは病室から出ていった。
目を閉じた。
頭の中でこんがらがってる記憶達を整理しようとする。
私は……
蒼君に守られてた。
蒼君はきっと、私にあの時の事件を思い出させないために……あの事件の後も、私を守ってくれてた。
胸の奥から、熱いものが込み上げてくる。
覚えがある感覚。
涙が出る直前の現象だ。