それでも君が。
先生は、「何か不安なことがあれば、すぐにナースコールをするんだよ」と言って、看護師さんと共に出ていった。
閉まったドアに向かって頭を下げていたお母さんの背中に、言葉をかける。
「お母さん……蒼君は……大丈夫、なの……?」
「大丈夫よ……。今刑事さんと話してるわ」
「ケガ……してない……?」
「してないわよ」
「……そ、か……」
フッ……と、自分の口から息が漏れる。
頭痛はだいぶ治まってる気がするけど、やはり熱があるからか……
ボーッとする。
さっきあったこと……
あの日、あったこと……。
全部、夢の中の出来事みたい。
……ううん。
夢だったら、どんなに……
「蒼ちゃん……呼ぶ?」
「い、いい!」
体を起こし、お母さんの提案を、すぐに断った。
お母さんは、面食らったように目を見開く。
「……羽月?」
「……合わせる顔が、ない……。蒼君のこと、私のせいでケガさせといてっ……会えないよっ、もう……」
涙が込み上げてきそうで、布団を強く握った。