それでも君が。
蒼君は、蒼君らしくない表情をしていた。
優しい時の蒼君とも
冷たい時の蒼君とも
違う。
まるで、何かが爆発しそうなのを我慢しているかのような…
私を、睨むようにして……
「おばちゃん、ごめん。羽月と2人にしてくれないかな」
蒼君はそう言って、病室の中へと足を踏み入れた。
自分の身体がビクッと跳ねるのが分かった。
お母さんは少しだけ目を丸くして蒼君を見ていたけど、口元に微かな笑みを浮かべ、「もちろん」と言った。
そして、私に向かっても、笑顔を見せた。
パタン……と、真っ白なドアが閉まり、お母さんの背中を隠す。
未だ入り口の前に立っている蒼君。
真っ白な壁に、蒼君が着ている青のティーシャツは、よく映えて綺麗だ。
そんな、どうでもいいことばかり頭に浮かぶ。
キュッ……と、彼が足を踏み出す音が響く。
あの日……訳が分からないまま、病室で目覚めたあの日と同じ、1人部屋。
ものすごく狭いという訳ではないのに、今は、ものすごく狭く感じる。
ギュッと、自分にかかる毛布を強く握った。