それでも君が。




少し固くなった蒼君の声に、目を上げる。



そんな訳はないんだけど、心臓が止まってしまったかのような錯覚に陥った。



蒼君が、あまりにも神妙な顔つきをしていて。



私をジッと見つめてくるから。





「……蒼く」


「お前は。俺がケガしたことを気に病むから。それが分かってたから……だから、記憶がなくなったんなら、そのままでいいと思ったんだ」


「………」


「……思い出させたくなんかなかった。あんな……あんな奴に襲われそうになったなんて」





語気を荒げないよう、我慢しているような口調だった。



私から目を逸らし、まるで犯人がそこにいるかのように、鋭い眼差しになる。




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