それでも君が。
蒼君は、淡々と続けた。
「でも……理由もなく俺から別れようとか言っても、お前は簡単には応じないと思ったし。もし、それで別れることが出来たとしても……お前は変に引きずって、苦しむかもしれない。それに、……」
そこで言葉を区切った蒼君。
小さく、私にも微かにしか聞こえない程の息を吐く。
私の目にはもう、涙はたまってなかった。
全部全部……
下に流れるだけ。
「……それに……何?」
そう促すと、蒼君は苦笑いを漏らした。
「勝手だけど……彼氏っていう立場にいたら、お前のこと守りやすいと思ったんだ。行き帰りも一緒に出来る。俺の周りの下らねぇ女達から、お前を守ることだって……」
そしてまた言葉を区切り、
「……女達からは……大して守ってやれなかったけど」
と言う。
蒼君が私を見ていないのは分かってるけど、つい、顔を横に振った。
──そんなことないよ。
蒼君は……私を守ってくれてた。
どんなものからも。
どんな人からも。
守ってくれてる……。