それでも君が。




「蒼君? どしたの?」


「ん? 何でも」


「……か、傘は?」


「俺が持ってくると思う?」


「思わない」


「なら聞くな」





フッと優しく眉を下げながら笑う。



その瞬間、少しだけ空気が柔らかくなったのを身で感じ、ホッとした。



私は自分の傘を広げ、それを掲げた。



すると、すかさず蒼君が傘の柄を持ってくれた。



いつものこと。



雨が降ってないのに傘を持つのは面倒だと言って、雨の予報が出ても、絶対に傘を持ってこない蒼君。



だからいつも、私達は相合い傘。




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