それでも君が。
2人で、水たまりを避けながら歩き出す。
傘に雨が当たる音と、靴が道路の水を弾く音が、やけに大きく聞こえた。
右にいる蒼君を盗み見る。
蒼君はただ前を向いていて、だけど、それだけなのに、カッコいい。
彫刻像とか、そんな無機質なカッコ良さじゃないの。
そこにいるだけで、周りまでも輝いてくるような、そんな素敵さ。
「羽月」
「えっ? あ、はい!」
「アイツ、さっき、昇降口にいた」
「あ、ああ……藤堂君?」
「アイツ、よくあんな風にお前にちょっかい出すの?」
「まさか! ちゃんと喋ったのも、今日が初めてだよ。去年はクラスも違ったし」
「そっか」
そう一言で締めくくった蒼君。
もしかして……心配してくれたのかな?
だとしたら、嬉しいな。