それでも君が。




「評判良くないから。アイツ。女たらしとか」





蒼君は私がいる方とは反対側を見ながら、そう言った。





「いくら女たらしでも、私には興味ないって! だって、いつも可愛い子か綺麗な人ばっか連れてるんだから!」


「羽月だって可愛いだろ」


「……蒼君。真面目に言わないで。道行く人がビックリするでしょ」


「ホントのこと」


「……蒼君くらいだよ。私のこと可愛いとか……目は小さいし、鼻はペチャだし、蒼君の隣歩くの恥ずかしいくらいなのに」


「尚更いいよ。俺だけが羽月の可愛さ分かってれば。他の奴には分からなくていい」





やっと私の方を見てくれた蒼君は、ニコッと穏やかに笑ってくれた。



鼻が痺れて、喉が苦しくて、胃がキューって縮んで、顔がピリピリした。



もう、好き過ぎてどうにかなっちゃいそう。



私は、傘の柄を持っている蒼君の腕に、そっと自分の手を添えた。




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