それでも君が。


私は首を横に二、三度振った。





「怖くなんて、ないよ。蒼君とだったら、どんなことだって……」


「……ごめん。意地悪言ったな」


「ううん! あの、私は……もし、そういうことをすることで、もっと蒼君と近付けるなら……あの、あの!」


「うん、分かった分かった」





ハハッと明るく笑い、蒼君は目を細めた。



ホッとした。


いつもの、優しい蒼君だ。



彼の腕に添えた手に、力を込めた。



ギュッと寄り添うようにすると、蒼君がフッと柔らかく笑う気配がした。





「ホントはさ。ちょっと躊躇うよ。羽月とそういうコトすんの」


「え……ど、して? 私、色気ないから?」


「違うよバカ。そうじゃなくて……何つーか、お前とそうなったら、冷静じゃいられなくなる気がする」


「冷静……」


「うん。そんなコトになってない今でさえさ、こんなに羽月のことで頭いっぱいなのに。これ以上お前のこと考えんのとか、カッコ悪すぎだろ」






そう言って、蒼君は苦笑いを漏らしたんだ。



──カッコ悪いとか、思う訳ないのに。



むしろ、そんなこと言われて、鼻血出そうになってるよ……蒼君のバカ。




< 40 / 292 >

この作品をシェア

pagetop