それでも君が。
私は首を横に二、三度振った。
「怖くなんて、ないよ。蒼君とだったら、どんなことだって……」
「……ごめん。意地悪言ったな」
「ううん! あの、私は……もし、そういうことをすることで、もっと蒼君と近付けるなら……あの、あの!」
「うん、分かった分かった」
ハハッと明るく笑い、蒼君は目を細めた。
ホッとした。
いつもの、優しい蒼君だ。
彼の腕に添えた手に、力を込めた。
ギュッと寄り添うようにすると、蒼君がフッと柔らかく笑う気配がした。
「ホントはさ。ちょっと躊躇うよ。羽月とそういうコトすんの」
「え……ど、して? 私、色気ないから?」
「違うよバカ。そうじゃなくて……何つーか、お前とそうなったら、冷静じゃいられなくなる気がする」
「冷静……」
「うん。そんなコトになってない今でさえさ、こんなに羽月のことで頭いっぱいなのに。これ以上お前のこと考えんのとか、カッコ悪すぎだろ」
そう言って、蒼君は苦笑いを漏らしたんだ。
──カッコ悪いとか、思う訳ないのに。
むしろ、そんなこと言われて、鼻血出そうになってるよ……蒼君のバカ。