それでも君が。
無意識に鼻を押さえてしまっていた私を、蒼君は優しい目で見てくる。
「そんなこと言って、蒼君は、半分はバスケのこと考えてるでしょ。あ、それがいけない訳じゃないよ。それに対して私は……既に、他のことは入らないくらい、頭の中蒼君だらけだよ」
鼻を押さえているせいで鼻声になった私の言葉を、蒼君は優しく微笑みながら聞いてくれて。
私を見ながら少し腰を屈めた蒼君は、周りから隠すように、私達に傘を近付けた。
そして、私の唇に、優しいキスを落とした。
道ばたで……と思いつつも、チュッと音を立てて唇を離した蒼君がまた優しく微笑んで
「俺もだって」
なんて囁くから。
胸がまた、ギュギュッと音を立てた。
「夏休み、たくさん2人で出かけような」
と言ってくれた蒼君は、傘を持ち直した。
私が頷き笑うと、その瞬間、蒼君が「あっ」と声を上げた。