それでも君が。
澪ちゃんがバタバタしたからか、蒼君と2人きりになった教室は、やけに静か。
外からは、部活動に励むサッカー部や陸上部の声が聞こえてくる。
これからどんどん暑くなっていく中、大変だなと思った。
「羽月」
蒼君が、私の名を優しく呼ぶ。
下に向けていた目線を上げれば、蒼君は私の目の前に来ていた。
真っ黒の髪の毛は、ワックスも何も使っていなくて、自然だ。
私を見下ろす綺麗な二重の目は、髪の毛の色を反映させたかのように真っ黒で。
その口元には、いつでも優しい笑みが張り付けられているんだ。
──そう、誰に対しても。
誰に対してもそうだったのに……特別な誰かが出来たの?
私が知らない間に……。