それでも君が。
「そ、蒼君……今日、部活は?」
「ミーティングだけだった。お前は? 何でこんな遅くまで残ってんだよ」
「私は、……委員会で」
「そっか。って、なに教科書落としてんだよ」
クスッと笑い、床に散らばる教科書を拾うためにしゃがみ込む蒼君。
その拍子に、蒼君がつけてる爽やかな香水が香った。
その香りは、高校生に上がった時から蒼君が使っているもので……胸がキュンと縮む。
私の教科書なのに蒼君だけしゃがませていることに気付き、「ごめんね」と言って、私もしゃがむ。
床に散らばる教科書に手をやると、たまたま蒼君の手と触れた。
「あっ……」
咄嗟に手を引っ込める。
「羽月?」
手が少し触れただけなのに、不自然にその手を引っ込めた私の名を、蒼君が不思議そうに呼んだ。
そして更に、顔を覗き込んでくる。