それでも君が。
家の外に出て、青い空が視界に広がったと同時に、私は思わず「え!?」と叫んだ。
私の家の門の前に、蒼君が立っていたから。
慌てて門から出て、彼を見上げる。
「蒼君!? どうしたの?」
そう聞くと、蒼君はほんの少しだけ口元を柔らかくし、言った。
「おはよ」
胸が、ギュギュッと締め付けられた。
久しぶりに会ったのだ。
あの日。
別人のようになった蒼君にキスをされた日。
あの日からずっと、連絡をくれなかった、彼。
夏休みが終わる直前に、思い切って自分から電話をしてみた。
電話に出てくれただけ、良かったと思うべきかもしれない。
でも、蒼君は電話口でもやっぱり少し冷たくて……
会いたいと言った私に、暇がないと言ったのだ。
──確かに、彼の部屋の電気は、夏休み中一度も点かなかったのだけれど……。
……でも、それでも、嬉しい言葉もくれた。
“夜とか、絶対1人で出歩くなよ”
そう言った瞬間だけは、昔の心配性な蒼君そのものだった。