アルホード王国
秘密通路を出て行く、レオンのがっしりとした背中をしばらく見つめ、レオナルドは書物を開いた。
王族一家は図書室の書物を読むことを禁じられている。
“偽りの歴史を知らない為”らしい。
レオンは“本当の歴史を知る為”図書室から本を失敬してきてくれる。
普段、図書室内には図書室員と書記係がいる。
夜中は書記係だけだ。
その書記係がたまたま居なかった今、レオンは書物を持って来てくれた。
レオナルドは舌を巻いていた。
すげえ――
多分、書記係の目を盗んでレオンは懐に書物を入れたのだろう。
書記係が図書室を離れることはない。
レオンは難しいこともサラっとやってのけるが、決してそれを自慢したりはしない。
「ほんと、すげえやつだ」
レオナルドは書物に目を降ろした。