虹の彼方
あたしは和くんの家に上がらせてもらい、少し話をさせてもらうことになった。
コーヒーを置いてくれた和くんのお母さん。
「和はね、小さなころから体が弱くて、スポーツなんか出来っこなかったの。」
「…」
「だけどあの子はサッカーがどうしてもやりたいっていったから…内心やらせたくなかったのよね。だけど、あの馬鹿…サッカーしてる時が一番笑顔なのよ。」
確かに…
ずっとサッカーをしてる和くんは、どんな時よりも笑顔で、楽しそうだった。
「だから簡単にやめさせることができなかったんだけど…もう入院が近づいてくると、ちょっと限度があるしね…。」
苦笑しながら喋るお母さんは切なそうだった。
「サッカーをやめなさいって言ったとき、和はとても悔しそうな顔してたのよ…」
思い出す、昨日の笑っていない顔。
あの切なそうな表情と辛そうな目。
あたしはほかの人よりも和くんと一緒にいた時間が長い。
いつも笑顔で、悲しい顔を見せることはない。
いつもそうだった。