言わずもがな。



『あ、聞いて聞いて。明日はね、2週間ぶりのデートなの』


「.....ふぅん」



馬鹿な君は、気付かない。
こんなにも黒い俺の心を。


泣きそうになりながらも勇気を出して吐き出した一言は、他人からしてみればきっと酷く滑稽に聞こえるに違いない。




―――あぁ、馬鹿は俺か。


さっきまで泣きそうだった癖に、今度は笑いが込み上げてきそうだ。





「...永井さんて、彼氏のことほんと好きだねー」




だって。その答えは、〝うん〟以外ありえない。



『うん、好きだね』


「.....あっそ。うっざーい」


『えー、聞いたの佐原くんなのに』




ケラケラ笑う君のことを、憎みきれないのはどうしてだろう?

これが、恋した者の呪いみたいなものなんだろうか。

だとしたら、〝略奪〟なんて思いも付かない俺みたいなどうしようもない奴は可哀相の一言でしかないと思わない?





(あぁ、もう。どうしろって言うんだろう)





痛くて痛くて。


やっぱり片思いなんて、柄にもないことはするもんじゃないと今更気付く。




...もう、大分手遅れだけれど。









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